公平な社会保障と税のあり方

graph 私の考える公平な社会保障と税のあり方とは、「ロールズ型社会的厚生関数が適用された社会保障システムを実現するため、将来世代への公平性を考慮した財政運営をする」ことである。
社会において最も恵まれない人々に対する最低保障とそれ以外の人々に対する自由を特徴とするロールズ型の社会的厚生の判断基準は、財政的に肥大し持続可能性に疑いが出てきた日本の社会保障システム再生の処方箋になり得る。年金・医療・介護の総費用は21世紀半ばにはピークを迎えることになる。
では、現在の日本で最も恵まれない人々とは誰のことだろうか?それは「財政的児童虐待」を受けようとしている、これから生まれてくる将来世代である。この世代に残されているのは社会保障どころか莫大な借金の山である。
政府債務が1000兆円を超えても金利が上昇しない理由として、消費税の引き上げ余地が言われている。未だ消費税率が5%であるため、15%あるいは20%の引き上げが可能で、財政再建の余地があるからである。その増税分を社会保障の増加分にのみ使ってしまえば、日本国債のソブリンリスクが注目されることになる。金利が上昇した場合、財政再建負担はいっそう増すことになる。
社会保障費用をまかなうために消費税増税分を使うという発想をまず置いて、将来世代に転嫁されようとしている負担を軽減することが最初に求められる。現在、担税能力がありながら負担を免れている人々も含めて、将来世代が過大な負担を背負わなくて済むようにすることが、今求められる社会保障と税のあり方である。