アメリカンフットボール部の不祥事で日本大学は執行部が刑事訴追されていることを理由に、そして東京医科大学も不正入学や不正入試の問題が発覚したことを理由に私学助成金が保留されました。今後の進展によっては減額されて交付される可能性もありますが、大学財政上は厳しい措置となっています。
私学助成は主に在学生数を基準に配分されており、医学部など特別な基準に該当する場合には加算されるので、日本最大の学生数を誇る日大に比べて東京医科大学の学生当たり私学助成金額は大きくなっています。
財務省の審議会、財政審は国庫からの支出を節約するためには歯に衣着せない提言をすることで知られています。文部科学省が小学校35人学級を実現するために教員定数の維持を求めた施策の結果を検証し、施策目標としていたいじめや不登校の減少が見られないと批判したのは記憶に新しいです。私学助成についても定員割れが続くような私立大学には助成を止めろ!という提言を出しました。
ツィッタランド界隈では、国立大学教員が年々減らされる運営費の窮状を訴え、文句を言う相手を間違えたかのように定員割れや赤字の私立大学を取りつぶせば窮状から救われるような発言を見かけます。全国21校の国立大学には、年間1.1兆円の運営費が交付されています。一方で全国589校の私立大学には総額で3千億円しか助成されていません。国立大学が経費のかかる理系分野を重点的にカバーしている点を考慮したとしても、国立大学をいくつか潰した方が余裕ができるはずです。
ちなみに国立大学の学費が上昇したと言っても私立大学学費に比べて安いのは、運営費交付金が大きいことが理由です。運営費が削られて困っているなら、学生納付金を引き上げることを検討すべきです。東京工業大学は国が定めた標準学費よりも引き上げることを表明しています。やろうと思えばできます。
そもそも国立大学を目指すには中高一貫校や進学塾に費用をかけられる所得水準の高い家庭環境が求められます。そのような学生に、なぜ私立大学よりも割安な学費で学ばせる理由があるのでしょうか?低所得な学生が国立大学でも私立大学でも学費水準にかかわらず選べるように、経済的な支援や奨学金制度を保障すべきなのです。2020年からの高等教育無償化は所得制限はつくものの、自由に大学を選べる経済的支援として注目しています。