入院差額ベッド代の話

家族の入院手続きをする際、差額ベッドの同意書にサインしたという経験を持つ人がいるでしょう。差額ベッドの場合、健康保険ではカバーされない自己負担が毎日チャージされることになります。本人は病気やケガで入院するので自分で手続きするのではなく、家族が不慣れな状況で病院の言うがままに手続きすることがほとんどです。

「差額ベッド」でググると住友生命のページが見つかります。
http://www.sumitomolife.co.jp/lineup/mirailabo/data/nyuuin_bed.html
平均的な差額ベッド代は個室だと7797円/日だそうで、4人部屋までの平均をとると6144円/日だそうです。これで2週間入院となると、相当の医療費がかさみます。もちろん保険会社ですから、ここぞとばかりに入院保険や特約を勧めてくるのです。

でも、差額ベッド代って必要なんでしょうか?

結論から言えば、患者とその家族が「個室」などを希望しない限り、差額ベッド代は支払う必要がありません。

厚生労働省は2018年3月5日付けで「保医発0305第6号」という通知を出しています。そこには「12 特別の療養環境の提供に係る基準に関する事項」という差額ベッド代に関する指導内容が含まれています。

・差額ベッド(特別療養環境室)は総病床数の5割まで認める。
その要件は、次の通り。
① 特別の療養環境に係る一の病室の病床数は4床以下であること。
② 病室の面積は1人当たり6.4平方メートル以上であること。
③ 病床ごとのプライバシーの確保を図るための設備を備えていること。
④ 特別の療養環境として適切な設備を有すること。

差額ベッド代を徴収してはいけないケースも列挙されていて、救急専用病床は除く、治療上の必要があって個室(感染症とか)は除く、大部屋が満室だからも除くとあります。

差額ベッドを断ったら、入院を断られるんじゃないか?と心配になるかもしれませんが、そんなことはありません。医療機関には医師法に基づく応召(おうしょう)義務があるので、差額ベッドの拒否は正当な理由とは認められません。もし、そのような医療機関があれば、厚生労働省の現場監督セクションである地方厚生局に通報して指導してもらうことができます。

番外編:なぜ病院は、誘導するかのように差額ベッド代の同意書をとろうとするのでしょうか?

健康保険の診療報酬は個人開業医が多い医師会に手厚く、病院には厳しい改定が続いています。入院させただけ診療報酬がもらえる出来高払いの時期は過ぎ、多くの疾病で包括払いという定額制が導入されています。つまり治りの悪い患者の場合は赤字になることもあります。その中で、少しでも増収につなげようとする経営努力の一つが差額ベッド代の徴収なのです。