オンライン授業のメモ(2)

オンライン授業になって想定外の影響

KALC教室

嘉悦大学の教室は、KALC(Kaetsu Active Learning Classroom)というアクティブラーニング用のフリーレイアウトでガラススクリーン二面かつプロジェクター3台天吊りという40人定員、詰めれば120人定員の中教室、そして履修希望者が殺到した場合に選択可能なカエツホール300人定員がある。講義科目は中教室、ゼミなどはKALCというのが一般的な割り当てである。

5月、資料などを取りに許可を得て研究室に立ち寄ったときのキャンパス

私は午前中の講義を担当するのが好みで、9時開始の1限や10時半からの2限に配置してもらうことが多い。午前中が苦手な(社会不適合なw)教員もいるのですみわけができている。地域連携の学務もあり、午後は外部会議出席のためキャンパスから外出できる方が都合が良いこともある。午前中の講義が良いのは、わざわざ朝から通学して履修する学生のモチベーションが高いことも理由の一つである。お昼休み直後の3限は、ランチを終えて眠くなる学生たちの意識を集め続けるにはひと工夫もふた工夫も必要になる。

オンライン授業はその前提を大きく変えてしまった。例年、1限の授業を選択する学生は40人前後、そして2限でも70人前後だった。通学時間が省かれた結果なのか、1限の授業に120名あまり、2限の授業にも100名を超える履修登録が集まってしまった。うれしい悲鳴なんてものではない。40人採点しようと120人採点しようと報酬は変わらないし、労力だけが増えてしまう。正直なところ想定外の事態だった。

もともと今学期、7月末から東京オリンピック開催に伴って定期試験禁止が周知されていた。文科省が大学に対して、オリンピックボランティアに参加する学生の邪魔をするな(意訳)という通知を出していたためである。授業開始を遅らせ、東京オリンピック中止(もとい延期)によって浮いた期間を学期期間に組み入れ、定期試験無しに課題で平常点評価するという変更によって、春学期の学事日程を組みなおすことができた。

ゼミは学生メンバーが固定なので、授業開始宣言前からzoomで勝手に始めてくれという要請があった。気やすい学生たちとzoomを使うトレーニングをさせてもらったようなものである。学生たちも教室のスクリーンに報告スライドを投影しながら発表するのを、zoomの画面共有でやるというツールが変わっただけの状況でゼミを円滑に実施することができた。

条件を満たすオンライン授業と構成

文科省が、大学がオンライン授業を実施するにあたって求めた条件がある。それは半期15回に相当する授業内容と教員・学生間の双方向コミュニケーションが確保されていることである。他大学の事例を見聞きすると、教科書を読ませて課題提出&学生は教員にメールで質問という形式があるとのこと。もしかすると学生間のコミュニケーション(つまり教室で他の学生が議論や質問することで周囲の学生の理解も進む)の条件を満たせていないかもしれない。

嘉悦大学でも文科省の求める条件を満たすオンライン授業の実施を教員に求めた。授業回数は11回+当初シラバスに記載していた授業タイトルでの課題研究を4本で合わせて15回分相当の内容確保、そして双方向コミュニケーションである。

私自身は、Google Classroomに一部教材の蓄積があったことから次のような形式を修正シラバスで宣言した。オンデマンド授業とライブ授業のハイブリッド型だ。

  • Google Classroomでの授業実施
  • 講義資料をPDFで提供
  • 講義動画を10分前後に切り分けて、YouTube限定公開で配信
  • 出席記録をClassroom質問で確認→学内LMSに一括登録
  • 授業開始50分後からzoomで質疑応答

Web会議システムはいくつか選択肢があった。ゼミ学生とも4月末くらいにいくつか試してみた。当初、zoomはセキュリティ問題が指摘されていたが、すぐに修正され、通信量が軽く、多機能であることから選択した。ClassroomにはGoogle Meetが付属しているのだが、画質や音声の安定性ではzoomの品質に達していないのと、最大参加人数が250人どまりなのも外れた理由の一つである。ゼミ学生とはLINEグループを組んでいる。LINEグループ通話のビデオ付きは、Meetよりも画質や音声が不安定で使い物にはならなかった。

他大学ではWebExやMicrosoft Teamsの事例もあるという。嘉悦大学もOffice365のサイトライセンスがあるので、Teamsを活用できる可能性はあった。しかし、Teamsを使い始めた大学では学生の個人情報が検索出来てしまう(もともと企業用なので従業員同士のチーム作業として検索できるのは当然)、Web会議が安定しない、課題提出に使おうとしたMicrosoft Formsのユーザー権限が教員から学生に移ってしまうなど、トラブルが頻出しているという話を聞く。

なぜ他大学の事例を見聞きしているかといえば、Facebookに大学教員向けの公開グループが立ち上がって盛況なのと、もともとICTスキルが私にあることを知っている友人知人の先生方から各種相談が寄せられるためである。

(続く)