センター試験よもやま話

合格祈願

大学入試センター試験が終わった。予想通り、様々なミスがニュースネタにされている。

今年はセンター試験監督を免れた。2日ともフル稼働な大学教員は全国的に少なくないだろう。センター試験監督の何がつらいって、少しでもミスるとマスコミの餌食になってしまう精神的なプレッシャー。手ぐすね引いてニュースにしようと待ってるからね。全国の試験監督業務な皆様、お疲れ様です。
https://twitter.com/#!/izumit/status/158039146265456640

試験問題の配付ミスがあった、暖房設備から異音が出ていて集中できなかった、試験開始時刻が遅れた、などなど。こういったミスは、マニュアル通りやっていたら間違うはずがない、試験監督者がたるんでる、と言われたりするわけだ。そもそも、全国一斉にやる「大学入試センター試験」自体の必要性がどれくらいあるのか、再検討した方が良さそうだ。受験生の将来がかかっている、なんて言われ方もある。であるならば、なおさら年に何回もやる高卒能力試験みたいなものの方が良いという提案は以前からなされている。ハイレベル、スタンダードの2種類の試験区分にすれば良い、なんて提案もある。東大・京大のように二次試験用に足切りが必要なら、自分たちで実施すれば良い話。外部にも試験会場を確保すれば1本の試験で済ませることもできる。

ニュースネタにされたミスの裏には、大多数のミス無しで成功させた会場担当者たちがいることを、「大学入試センター試験のトラブルは誰の責任?」と倉部史記(マイスター)氏は指摘する。ミスした担当者は惰性で仕事をしていたと推測する。

大学によって試験監督者の説明会や研修会を何回やるのか、担当科目が何科目なのか、条件は違う。ロールプレイングまでやって確認するところもあれば、マニュアル読み上げで終わるところもある。大きな大学だと試験監督は1科目で終了といった話も聞くし、小さな会場だと2日間ともフルで朝から晩まで担当することもある。今は他大学と共同実施になっている本務校も、以前試験会場だったときは全科目を担当していた。2日目午後にはさすがに集中力が切れかかったのを覚えている。

マニュアル通りにやれば……と言うときに本当のマニュアルに目を通したことが無い人なんだろうと思う。次年度に向けた改善と称する実施内容のほどんどが、マニュアルへの注意事項・FAQ追加だからだ。読んでいると、何でこんなアホらしい注意が載っているんだ?と読み進めるのが馬鹿らしくなる内容すらある。これが毎年追加されていくのだ。Q.ケータイの電源を切れない受験生がいたら?A.封筒に入れて預かり、監督補助者を通じて試験本部へ持って行く、みたいな。

かつて慶大医学部でもセンター試験を採用していたことがある。文科省の天下り組織である大学入試センターを延命させるべく、国公立大学のみならず私立大学もほとんど参加した試験にしたいという圧力があるためだ。しかし、慶大は現在、すべての学部でセンター試験利用を取りやめている。かつて慶大医学部でセンター試験利用の合否判定をした経験のある先生との立ち話では、センター試験満点の出願者ばかりだったので、内申書などその他書類でしか合否判定できなかったので取りやめた、とのことである。最後まで使っていた慶大法も同じような状況だったようだ。

地歴・公民の試験問題誤配付が問題になった背景には、試験プロセスの簡略化による受験生の便宜と経費削減がある。なぜなら、大学入試センター自体が事業仕分けでは独立採算でやるべきだと批判されているからである。センター試験利用大学は、試験監督を行うと大学入試センターから委託費が支払われ、受験生の成績結果を請求するときに利用料を支払うという関係にある。受験生からは受験料を受け取る。委託費=経費を削減すれば、採算が良くなる仕組みだ。利用料を上げすぎるとセンター試験利用大学から脱退されてしまう恐れもある。いずれにせよ、大学入試で食っていくための組織が延命を図っている姿しか無い。

余談追記:マニュアルに書いてあるとおりにアドリブを入れずきっちりとルーチンワークをこなす、というお仕事は大多数の大学教員にとって苦手な仕事だと個人的には思う。ミスするなよ、ミスするなよ、と声かけしながら大失敗をやらかす、ダチョウ倶楽部のネタみたいに思えてならない。大学職員にやってもらった方がなんぼかましか。