家族が介護が必要になったときに仕事を辞める、それが「介護離職」です。収入源と家族介護者としての閉塞感が共倒れの危機を招きます。
家族の介護や看護のために仕事を辞める「介護離職」が年9万9100人に上ることが13日、総務省の2017年の就業構造基本調査で分かった。
(朝日新聞2018年7月13日付け)
https://www.asahi.com/articles/ASL7F3TKLL7FULFA00V.html
約10万人が年間、介護を理由に離職しています。この中には介護休業制度を利用している人は含みません。おそらく離職前に介護休業制度を使った人もいたのでしょうけれども、それでは間に合わなかったのかもしれません。
介護休業は、育児・介護休業法という育児休業と同じ法律に定められています。一般の給与所得者(サラリーマン)なら、雇用保険を原資に67%の休業補償も用意されており、2017(平成29)年からは「対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として、介護休業を分割して取得可能」になりました。
介護離職については様々な助言が記事になっています。
共通するのは、「早まるな!」という助言です。
「なぜ介護離職した人は”必ず後悔”するのか 親が死ねば年金は1円も入らない:PRESIDENT Online – プレジデント」
https://president.jp/articles/-/25834
「介護離職は終わりの始まり 高齢化社会の現実 しんどさは“雨に濡れた人”にしかわからない」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/061800164/
「介護離職を減らそう!仕事と介護を両立するために|みんなの介護 」
https://www.minnanokaigo.com/guide/care-trouble/leave-job/
2000年に始まった介護保険は、従来の「家族介護を基本においてダメなら老人ホームという介護モデル」を否定しました。よく知らない方は、最後は老人ホームに入るのがゴールだと勘違いしている向きがあります。要介護高齢者の在宅生活継続を支援するのが介護保険の目指すところです。その在宅の中には、老人ホームに居を移して生活する姿も含みますが、全員のゴールではありません。
家族を介護するのは家族の役割だと思い込んでしまうと、自分の人生に大切なことを見誤ってしまうかもしれません。もちろん、経済的に恵まれていて、家族を介護することが自己実現でもある、という人を止める権利はありません。そうでないなら、まずは専門家への相談が必要です。特に問題視するのは、祖父母の介護を孫世代が担う「ヤングケアラー」です。
介護に追われる若者たち 「ヤングケアラー」の孤独:日本経済新聞
(中略)
埼玉県内に住む女性(23)は大学卒業までの約2年、祖父母の介護を母親と担った。
2人との同居は中学時代から。やがて認知症の祖母に、不可解な言動が現れ始めた。家族の誰が介護するか。父と姉は仕事がある。母もパート勤め。学生の自分がデイサービスの送り出しや家事を手伝い、毎日深夜のトイレに付き添った。
■学業や就職に影落とす
目標の海外留学は断念せざるを得なかった。友人の遊びの誘いも断った。ある日、病院の付き添いで講義の欠席を大学に相談した。
(後略)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO98436160V10C16A3CZ8000/
少子化人口減少社会で次世代を担っていく若者が家族介護に時間をとられ、就業や就学に支障を来すようでは、個人の人生設計だけではなく社会全体の成長力が削がれてしまいます。日本でも家族介護者に手当を出せば?という提案もときどき見かけますが、このような人々を固定化してしまう恐れがあります。
外国人労働力を介護の現場に導入する動きは、インドネシア、フィリピン及びベトナムを対象とした経済連携協定(EPA)での受入れに始まり、現在は介護福祉士を取得した外国人を対象とする在留資格「介護」、そして2017年11月からは技能実習(介護)へと広がっています。また、留学生の資格外活動でのアルバイトとしての採用も行われています。
日本人に介護されたいという利用者の希望があると、外国人介護職の出る幕は無いのではないか?と思われるかもしれませんが、求人倍率は約4倍で日本人の求職者を介護職場で見つけるのは困難になっています。介護保険施設やサービスの現場で人手不足が続くと、日本のGDPを牽引してもらわなければならない人材が介護離職していくことになります。長期的に見て、日本経済の先行きに暗雲をもたらします。
個人の人生設計においても、日本の経済社会の問題としても、ストップ介護離職を進めなければなりません。