区立無認可保育園とは!?

公立なのに無認可の保育園がある。ある自治体関係者の方に、えぇー!と驚かれたのでこちらで紹介しておきます。

認可保育所として認可を受けるためには、職員配置及び設備の基準を満たす必要があります。0歳児3人につき保育士1人とか、保育室の面積とか、そういう基準です。認可外(無認可)保育所は、そのような基準を何らかの理由で満たせないところがほとんどです。例えば保育者はいるけれども有資格者が不足しているとか。

待機児童問題に悩む、東京都特別区を例に「区立無認可保育園」を紹介してみます。隣接する杉並区と中野区です。

杉並区保育室とは、保育所入所待機児童を解消するための緊急対策として、杉並区が整備している認可外の保育施設です。
現在、区が運営している直営型を7か所と、民間事業者が運営している委託型を14か所開設しています。

http://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/kosodate/navi/ninkagai/1004716.html

杉並区には「杉並区保育室」の直営型が7園あります。いずれも0~2歳児までに限定し、3歳になれば他の幼児教育・保育施設に移る必要があります。

「中野区立保育室」
待機児童解消のため0~2歳を対象に期限を設けて開設している保育施設です。認可保育園ではありませんが、保育内容は認可保育園とほぼ同様です。

http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/244000/d011915.html

中野区には「中野区立保育室」が7園あります。待機児童対策として、公園や公有地などに2年間の限定で開設されました。2018年の区長選挙で現職の田中氏が落選し、区職員だった酒井氏が当選しました。いわば前区長の置き土産ともいうべき存在です。置き土産でもありがたがってもらえれば良かったのですが、期間限定なのと、既に待機児童が解消されつつある北部地域に集中設置された結果、全園1歳児クラスで定員割れ、2園は0歳児クラスですら空き有りという状況(2018年11月1日現在)です。

杉並区も中野区も、これらの「区立無認可保育園」について認可と同等の保育内容を確保している(基準を満たす)と言っています。それではなぜ設置認可をとらないのでしょうか?

保育所の設置認可権限を持つ自治体は、都道府県、政令指定都市及び中核市となっています。これが川崎市であれば、公立なのに設置認可しない選択は無かったでしょう。しかし、特別区や一般市は設置認可権限が無いので、都道府県と協議して設置認可手続きを進める必要があります。その手間を惜しんだと言えるのかもしれません。

また、認可保育所運営費については地方分権の一環で、国負担分について国庫支出金(補助金)では無く税源移譲や地方交付税措置によって算定されています。地方交付税の不交付団体や東京都による財政調整を受ける特別区では、自らの財源のみで保育施設運営費を捻出していますので、認可を受けようが無認可であろうが、出て行くお金は同じお財布ということになるのです。

このような特殊事情があるための「区立無認可保育園」なのですが、待機児童解消のあだ花にもなれずに消えゆく運命となっています。