政府は2008年に、「留学生30万人計画」を発表しました。これは大学だけではなく、専門学校や日本語学校も含めた人数です。当時の政府は、外国人材については高度専門職に限って受け入れるという方針を堅持していましたので、高等教育機関に留学して日本語ができて生活習慣にもなじんだ卒業生が、人口減少社会の日本で労働力を支えてくれることを期待していた面があります。留学卒業生は期待通り、日本の労働力として働いているのでしょうか?
2017年10月末現在の外国人労働者の雇用状況を厚生労働省が発表しています。積上げ棒グラフの一番下が「専門的・技術的分野の在留資格」で、着実に伸びていることが分かります。それよりも急増しているのは、「資格外活動」と「技能実習」です。留学ビザで滞在する留学生は、「資格外活動」の許可を取れば、週28時間(夏休み・春休みは1日8時間)まで働くことができます。飲食店など接客を伴うアルバイトに従事した留学生の日本語会話能力は飛躍的に伸びる印象があります。ときにはべらんめー調の日本語になってしまう留学生もいるくらいに。ただし、風俗営業許可の必要な業種で働くことは禁じられています。隣に座って接客したりする飲食業、パチンコなどは違法となります。
在学中から留学生は資格外活動を通じて日本の労働力不足を補う人材として貢献していることが分かります。コンビニ店員にも外国人は増えてきていますが、そのほとんどが留学生の資格外活動です。コンビニを専門的な技能と認定して就労ビザを出す仕組みが存在しないからです。
大学を卒業した留学生が正社員として就職しようとしたとき、就労ビザの問題が発生します。日本人卒業生と同じような業務では、就労ビザが発給されるとは保証できないからです。「専門的・技術的分野の在留資格」を得るためには、翻訳・通訳・国際業務などに従事することが示されなければなりません。
例えば学生時代にラーメン屋さんでアルバイトをしていた留学生が、相思相愛で正社員になりたいと望んでも就労ビザが下りません。本部で外国人アルバイトを人事労務管理するとか、いろいろと専門業務、国際業務っぽい理屈が必要になります。
人手不足の声に押されてか、大卒・院卒の留学生を年収基準で就労OKにしようというニュース記事が出ました。
法務省は外国人留学生の就労拡大に向け、新たな制度を創設する。日本の大学または大学院の卒業後、年収300万円以上で日本語を使う職場で働く場合に限り、業種や分野を制限せずに外国人の在留を認める。これまでは大学の専門分野に関連した就労しか認めていなかった。来春にも新制度を導入し、留学生の就労拡大につなげる。
(中略)
国税庁の2016年の民間給与実態統計調査によると、勤続1~4年の日本人の平均給与は303万円で同水準だ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35015520V00C18A9MM8000/
つまり、安い労働力として外国人材を使い倒すつもりでなければ、業務を問わず正社員採用できる方向に舵を切ったわけです。