増税を隠す方法


社会保障と財政の専門家が集まる研究会で話し合われたことは、早く政府収入対GDP比を引き上げないと財政破綻は免れないだろうし、将来的な社会保障給付の費用もまかなえないという2点である。

社会保障給付の自然増つまり高齢化に伴う年金や医療の費用が勝手に増える分については、5%引き上げて10%にするくらいでも何とか2020年くらいまではまかなえる。社会保険料で徴収している部分もあるので。

しかし、政府債務一千兆円に達した現在、この債務を返済して減らすためには10%以上の引き上げは不可避である。現在でも償還期限が来た国債分の債務を返済し、新規に国債を発行するという自転車操業をやっているわけだが、債務残高が増えないというプライマリーバランスを達成するためには返済ペースを速める必要がある。

なお、消費税を引き上げるのに「2014年4月に8%、2015年10月に10%とする」と民主党は決めた。本来なら基礎年金財源で2012年から引き上げなければならなかったものを先送りしている。自民党・公明党は与党時代に2012年からの引き上げを法律に書き込んでおきながら、政争の具にしてくれている、たいした野党だ。ごたごたして引き上げが遅れれば遅れるほど、将来世代が負担する税額は多くなり、消費税引き上げもピークが高くなる。

このポストの本題「増税を隠す方法」、研究会で冗談交じりに上がったネタだ。年少扶養控除廃止に伴う実質的な増税は、消費税ほど騒がれることもなくあっさりと決まり、粛々と実施されている。国と地方あわせて1兆円程度の増税になっているとみられる。合わせ技だったはずの子ども手当は来年度から児童手当に逆戻りするし、少子化対策どころか逆行政策になっている。そう、所得控除廃止こそが増税を隠す方法の名案というわけだ。配偶者控除、成年扶養控除あたりは廃止しても大丈夫だろう。給与所得者控除と公的年金等控除は減額してやると、実質的な増税になる。

消費税の引き上げが日常生活で実感されやすいのに対して、控除廃止や減額は天引き額が増えることでしか実感されにくい方法だ。どうせやるならこっちに路線転換してはどうでしょうかね、財務省さん!