オンライン授業のメモ(4)

Google Classroomでの遠隔授業

従来、オンサイト(つまりキャンパス)授業の補助としてGoogle Classroomを活用してきた。遠隔授業で使うことになるとは今年度になるまで考えたこともなかった。講義の振り返りとして、Googleフォームで確認テスト(自動採点)を用意したり、ゼミでスキルトレーニング課題を出したり、ゼミの資料共有などに使ってきた。

講義の振り返りに使っていたGoogleフォームの確認テストの一部は教材蓄積として、遠隔授業の毎回の授業時課題として再利用することができた。もちろん遠隔授業のコンテンツにするために修正は必要だったし、講義動画の準備に時間を追われた。

2018年度から2020年度にかけて、中野区教育委員会の外部評価委委員を務めている。新型コロナによる学校休業でどのような対応をしたのか、2019年度3月分までしか評価はできないが、公立小学校・中学校の学びが止まってしまった事態に注目している。ちらほらGoogle Classroomのアカウントが配布された、学校によってはまったく対応できていないなどといった話を耳にする。

学修管理システム(LMS)の老舗としては、有料のBlackboard、そしてその無料版とも称されるmoodleがある。さらには国内製品として、manabaやUniversal Passportの採用事例が多い。嘉悦大学も履修登録、成績管理、お知らせなどはUniversal Passportを「学ナビ」と呼んで利用している。遠隔授業で使うには、クラウド型LMSでないとトラブルが発生することが見込まれ、Google Classroomを活用することにした。もともと嘉悦大学は、Google Apps for Educationと呼ばれていた時代のG Suite.導入大学の2番目か3番目である。メール管理をGMailにし、Googleドライブを活用してクラウド上で学生たちが共同編集作業をするなど、最先端を自負するICTスキルを修得していた。

Google Classroomを活用しようとするとき、Googleサービス全般の付き合い方を知る必要がある。Microsoft製品だと、必ずバージョン管理がある。Windowsで言えば、XP, 7, 10といった具合だ。Officeにもバージョンがある。しかし、Googleサービスにはその概念が無くて、新機能が即時追加されたりする。気づいたら新しいメニューが加わっていたとか、無くなっているとか、仕様変更がある。おかげでマニュアル本がほとんど無いか、内容が古くなっている。ググって見つかった情報が違っているかもしれない。こういうものだと割り切って使える人にはお勧めする。

Google Classroomにストリームとメンバーしかなく、授業や採点の無かった時代を知っているだろうか?ストリーム上にインラインでしか授業を構成できなかった。4年前に設定したクラスはそのまま残っている。Google Meetがデフォルトで設置できるようになったのも今年になってから。

2020年7月時点で不満に思っている点は、Google Classroomのメンバーが「教師」と「生徒」のロールしかないこと。「教員」「学生」に変更できるか選択できるようにしてほしい。さらに、補助学生SA/TAを指定できるロールが欲しい。さらには「生徒」ロールの画面を仮表示できるようにしてもらわないと、学生からどういう画面として見えているのかが分かりにくい。

Google Classroom活用Tips

遠隔授業でGoogle Classroomを使う場合、事前設定に注意すると教員・学生ともにストレスから解放される。特にメール通知を切るのは、多数の科目でGoogle Classroomを使っているなら必須だ。科目>設定>全般>ストリームでの授業>通知を非表示にする。

もし通知を表示のままにしていたら何が起こるのか?
真夜中までかかって資料や動画を「授業」にアップしたり、ストリームに連絡を書き入れたとき、学生には都度メールが送信される。
学生がコメントしたり、課題を提出するたびに教員に通知がやってくる。
PCのブラウザだけではなくスマホアプリを入れさせていれば、スマホも通知してくる。

アップロード作業を真夜中にする場合でも、日時指定の予定公開にすることをお勧めする。

Google Meetの固定リンクはあまりお勧めしない。ホストが一番最初にミーティングに入らなければ不都合があったり、安定性ではzoomが優れているから。

設定の採点>成績の計算についても、私の担当科目では授業時課題50%:課題研究50%という設定にしている。授業時課題は10回分Googleフォームで選択式の確認テストを実施し自動採点で成績がインポートできるようになっている。課題研究はいわゆるレポート形式なので教員が採点する必要があるが、入力できるようにしておけばまとめて採点を合計して成績評価することができる。各課題の配点が100点満点であっても、カテゴリ別加重平均にしておけば案分して指定した割合を上限とした採点合計を出してくれる。

「メンバー」には履修学生を登録する。設定にあるクラスコードを自分で入力させるやり方もできるが、漏れが生じる可能性もあるので、私の場合は履修登録済みの学生に招待メールを送る形式で登録した。

「授業」にはトピックを設定できる。大学の授業であれば、シラバスの授業計画に書いた各回のタイトルを設定すると良い。私は学生が混乱しないように、授業日の日付をタイトルに付加する工夫もしている。例.「第10回 社会保険:公的年金制度(7/7)」
なお、トピックを設定してもコンテンツが一つも無いと学生にトピックは表示されない仕様になっている。

資料は、URLリンク、アップロードファイル、Gドライブファイル、YouTubeリンクなどをアップできる。一つのコンテンツに複数の要素をまとめてアップすることができる。例えばPDF、YouTubeリンクなどをまとめて一つのコンテンツにできる。ただし、PDFで一つ、動画で一つと分類した方が学生にはわかりやすいようだ。

課題は、レポート課題など自由な形式で提出させるときに向いている。例えば、スライドを出題時に指定しておけば、テンプレとなるスライドを編集加工したり穴埋めさせたりといった課題ができる。そのとき、新たに[+作成]したドキュメント、スライド、スプレッドシートの扱いを「閲覧可能」「編集可能」「コピーを作成」から選択することができる。「閲覧可能」ではダウンロードさせたり資料提示として使うことができ、「編集可能」では学生たちで共同編集することになる。「コピーを作成」は学生一人一人にコピーが作成されるので、学生はそのまま編集加工して提出することができる。

テスト付き課題では、Googleフォームで作成した選択問題を自動採点して成績をインポートすることができる。確認テストなど正解のある問題作成をお勧めする。Googleフォームのラジオボタン、チェックボックス、行列の組合せで回答するグリッドなど、配点と解答集を作成しておくことで自動採点できる。提出を締め切った後、テスト付き課題の提出状況を表示させ、「成績のインポート」をクリックするとGoogleフォーム側で記録されていたスコアがGoogle Classroomの採点にインポートされる。

(続く)