オンライン授業のメモ(5)

春学期、ゼミナール(研究会)についても完全オンラインで実施されることになりました。その方法や例年との比較を振り返っておきます。

嘉悦大学では2年生からゼミナール(研究会)に所属します。卒業までの6セメスターにわたる履修と卒業論文・制作が卒業要件になっています。3年早期卒業の候補者については3年次に4年次履修予定だったゼミと卒業論文・制作を重ねて履修することになります。受け入れ先の教員が了承すれば、半期ごとにゼミナールを移籍することもできます。

http://www.kaetsu.ac.jp/for-student/seminar_s/2019_1/contents1

春学期オンライン授業開始前に、大学が全教職員及び全学生を対象にWeb会議システムzoomのサイトライセンスを契約しました。無料アカウントの制約として、3人以上のミーティングに40分時間制限や100人上限があります。通常の有料アカウントだと時間無制限、クラウド録画、ストリーミング配信可能などが加わるのですが、教育機関版だと300人上限まで加わります。いわゆる中教室での授業に対応したサイズです。

完全オンラインのゼミナール(研究会)は、zoomをベースに2年生はGoogle Classroomを併用したスキルトレーニング、3年生は夏休みに実施される3年次研究発表会(卒業研究の中間発表)、4年生は卒業研究の進捗報告として実施しています。

3年生、4年生は学生が画面共有してスライドや文章を報告してもらう形式で順番に回していきます。嘉悦大学のゼミのサイズは平均的には20人弱なのですが、私のゼミは「社会保障の経済学」というテーマが人を選ぶのか、例年10人未満で推移しています。しかも日本人男子学生不足が続いていて、過去5年間もぐり以外は在籍したことがありません。日本人女子と留学生のみです。春先に入ゼミ申込みに出遅れた日本人男子学生から問い合わせがあったときに「久しぶりの男子だ」とうっかり漏らしたら辞退されてしまったという笑い話もあります。おかげで授業時間内に学生報告が回りきるというメリットがあります。

2年生ゼミは毎週、スキルトレーニングに取り組んでいます。2つの動画を視聴して、その内容について比較分析したり、Excelの基本的な操作について確認したり、情報検索したり。G.Suiteの扱いについては初年次教育で共同編集作業も経験しているのでまったく問題ありません。在学生にとって当たり前すぎて「クラウドで共同作業する経験を積んできました」と就活の自己アピールで言えと伝えてもピンとこないようです。

例年取り組んでいるスキルトレーニングのうち、実施できなかった、対面授業になったらやっておきたいものがあります。それは「速読トレーニング」です。いわゆる資料読みができるようになるために、新書1冊10分で大意をつかむトレーニングをやっていました。5~6冊を90分間で速読し、どこを読んだら大意がつかめるのか、パターンはあるのか、学生同士でもコツを共有しあいます。頭から最後まで読む小説読みから、必要な資料を見分けて、大事な個所をじっくり読めるようにするという方法論を学びます。

Googleドキュメント共有での文章読解・要約トレーニング

先日は、zoom音声とGoogleドキュメント共有で、文章読解・要約に取り組みました。新聞記事を使って、見つけた論点をハイライトし、箇条書きで抜き出し、要約します。ハイライト色は被らないよう指示して、区切り線で各自の要約スペース確保しておきます。デスクで隣を横見しながらの作業を擬制してみたわけです。進捗を画面で見ながら、適宜zoom音声で助言していきます。

みんなで練習に取り組んだ後は、同じ形式で個人課題を翌週までにこなす方法です。留学生と日本人学生が混ざってやっていますが、優秀なのは国籍関係ないと感じます。量をこなしてきてない学生には、量をこなしてもらい、スキルのレベル合わせを狙っています。

ちなみに新聞記事の素材はこれです。
日本経済新聞速報「ドイツ、コロナ対策で消費減税 景気対策16兆円規模」

要約例はこれです。

 ドイツは景気対策の目玉として半年間の大規模な消費減税を実施する。従来型の対策でドイツ経済の主要産業である自動車が対象外となった。消費減税は中立的政策で、誰にでも恩恵が及ぶという意味で公平な政策である。日本の消費税にあたる付加価値税の税率を7月から半年間19%から16%に、軽減税率も7%から5%に下げる。財務当局にとって財政健全化に向けてタブーの選択肢かつ、小売りの現場が混乱に陥る問題を抱えている。(200字)

(続く)