東野圭吾『麒麟の翼』

映画化されて公開が始まったというタイミングで、積ん読の山から取り出した一冊。東野圭吾作品は海堂尊作品と並んで好きな作家だ。新作を待ち望んで読む、というスタイルでは無いが、書店で平積みされていたら手にとってレジに向かうという感じ。仕事柄、書店にはよく出向くので、取りこぼしはあまりない。

この作品で起こる殺人事件の犯人探しにはあまり意味がない。いや、最終章に向けて犯人が明らかになることは必要なのだが、タイトルである「麒麟の翼」に関わる人間模様を描写することが作品の目的にも感じる。犯人は意外な人物であっても、ふーんとすまされてしまうところがある。東野作品の醍醐味は、数々の伏線が最終章に向けて結びついて解決されていく爽快感にあると個人的には思っている。もちろん人間模様を描かせたらなかなかのものなのも踏まえて。しかしながら、この作品では伏線の解決の仕方がいまいちに感じてしまい、なんだか物足りなく思ってしまった。

★★★☆☆