国家公務員給与削減の違和感

すべてがずれている国家公務員給与削減

日本経済新聞「公務員給与削減で民自公合意 12~13年度は7.8%」

 民主、自民、公明3党の政調会長は17日、国会内で会談し、国家公務員給与削減に関する合意文書に署名した。2012~13年度は10年度比で平均7.8%下げる。自公両党が議員立法で提出している給与引き下げ特例法案を修正したうえで月内成立を目指す。
11年度は給与を平均0.23%引き下げる人事院勧告(人勧)を11年4月にさかのぼって実施する。7.8%下げと合わせた削減分は約6千億円の見込みで、東日本大震災の復興財源に充てる。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E3E5E2E3858DE3E5E2E0E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2

民主党はマニフェストで「国家公務員の人件費2割削減」をうたっておきながら、結局実現したのは給与削減7.8%だという。あれっ、半分も達成していない……?なんて批判は野党に任せておこう。なんて思ったら、実は自公両党の案丸呑みだそうだ。

何のために「国家公務員の人件費2割削減」をうたったのか、それは財源を捻出するために間違いない。埋蔵金探しや事業仕分けと同じく、威勢はよいが実現性も効果も困難な項目だ。しかし、与野党ともにずれた達成感を味わっている。「国家公務員の人件費削減」と「国家公務員給与削減」は同じものに見えるかもしれないが、別物だ。この記事につけた図を見て欲しい。赤線で切ったのが「国家公務員給与削減」で、民間で一般的に理解されている「人件費削減」とはオレンジ線で切った状態を言う。つまり、皆が給与を減らして人件費を減らすなんて方法は霞が関や永田町の常識でしか無いやり方である。皆で一律給与削減ではなく、高給取り数人に辞めてもらうだけで人件費削減目標は達成できるわけだ。また、捻出された財源は復興財源に回されるそうだが、後付けの理由に過ぎない。

民間は、失われた10年と言われた1990年代後半に中高年のリストラという身を切る人件費削減を行った。当時は、日本的雇用の崩壊であるとか、中高年の自殺者を増やしただの批判を浴びることになった。それでも企業の生き残りと、残された従業員の雇用を継続する努力がなされたことは評価される。国家公務員の解雇は、分限免職という方法以外には無く、事実上の終身雇用が保障されている。これを取り上げて、2月15日に衆院予算委で岡田副総理(公務員制度改革担当相)は、「(解雇は)今の公務員制度の下ではできない」と答弁している。しかし、任意で辞めてもらうことはできるし、定年延長を取りやめることで人員を減らすことが可能だ。

もっと言えば、公務員制度改革を本気でやり通すのであれば、国の仕事と地方の仕事をきっちりわける地方分権改革を進めることと、国民に対して「おかみ頼み」を止めてくれ、国の仕事に優先順位をつけさせてくれ、と言わなくてはならない。元経産省キャリアの古賀茂明氏が言っているように、既得権益として規制緩和で仕事が減っている省庁では人あまりが生じているし、厚労省のように仕事が増えているところでは人不足が生じているわけで、余剰人員は存在する。国の仕事の線引きを、費用つまり税金と見合いで行い、余剰人員を新規につくることもできる。こういった部分での退職勧奨、分限免職(仕事や部局が無くなる場合も適用可能)を実施する余地は十分にある。国民に対して説明する努力不足や、霞が関官僚の反発を恐れての場当たり的対応が、今回の合意にむすびついている。