待機児童対策のマイルストーン(1)

公共選択学会誌『公共選択』第69号に「保育サービス供給と財政,待機児童解消への取り組み」という論文を発表しました。”待機児童対策のマイルストーン”と題して、シリーズ記事を公開したいと思います。

全体を通して読みたい方は、お近くの大学図書館、国会図書館で閲覧されるか、出版元の木鐸社にご注文ください。友人・知人の範囲でしたら個別にご連絡ください。


  1. 保育サービス供給を捉える視座
    2015(平成27)年度から始まった「子ども・子育て支援新制度」から保育サービス供給のあり方が大きく変化してきている。その翌年,国会質問でも取り上げられた「保育園落ちた日本死ね」は流行語大賞にも入選した。子育て世代にのみ知られていた保育所待機児童問題が多くの人々に知られるきっかけとなった。
    次世代を担う子どもたちと働きながら子育てする両親のために保育サービスが必要という認識が広がる過程で,待機児童を減らすどころか増やしてしまっている一部の地方自治体に批判が向けられることになった。保育所を増やす努力が足りないのではないかと。国が「待機児童解消加速化プラン」において目標としていた2017(平成29)年度末の達成断念を公表した際も同様である。
    本稿では,保育サービスを確保するための取り組みが地方自治体そして国においてどのように実施されてきたかの経緯を確認し,財政の構造,保育料のあり方,そして働き方改革との関連について俯瞰的に捉える視座を提供したい。行政による取り組みの経緯を知らない,あるいは問題の構造を知らない論者によって不毛な批判が繰り返される状況から抜け出て,建設的な議論へとつなげていきたい。

(論文冒頭より)