待機児童解消のマイルストーン(5)

「マミートラック」と少子化対策の社会的費用
子育て中の母親が就業先で業務を軽減された人事コースを選択する「マミートラック」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

主に大企業は従業員に対して、短時間勤務(時短)や育児休業の延長といった選択肢を用意してきました。しかし、それを選択するのは女性社員だけで、ワーク・ライフ・バランスの実現で重要な、男性・女性を問わず働きやすい職場環境整備とはほど遠い、偏った運用がされてきました。一度マミートラックを選択した女性は、その後の人事処遇・昇給においても同期入社の男性社員と競るような機会は与えられません。育児休業からの復職では、人事評価がゼロからのスタートになります。育児休業が長引けば、復職後の業務能力に不安を覚えたり、顔見知りの同僚がみな異動していたりと、結果的に自主退職につながってしまいます。本来、このような制度は出産・子育てを支援する目的で用意されているにも関わらず、キャリア形成・継続のためにあえて選択しない労働者を生み出しています。

企業によって女性社員の比率は異なります。女性社員比率の高い企業ばかりが少子化対策の社会的費用を負担することになります。共働き世帯で母親だけが育児休業を取得することや保育所を利用している子どもが発熱などで呼び出される、看病するため有給休暇を取得するのが母親に偏ることなど、男性社員の比率が高い企業は社会的費用を負担しないフリーライダーになっています。

何らかの手段で男女の子育て負担格差を是正あるいは補償していかなければ不公正な仕組みになっています。その前提条件として認可保育所の待機児童解消を実現しなければなりません。