保育所の選び方(1)

日本も広くて、保育所不足の地域と子ども不足の地域があります。子育て世帯にとって育児休業明けに保育所に子どもを預けることができるか、家計設計や子育て方針をも左右する重大な関心事です。数多ある保育所から優先順をつけて入園申込みするというのは、待機児童が解消していない地域では祈るような気持ちで選ぶでしょうし、逆に子ども不足の地域では保育所を選べないということも出てきます。

個人的なことを言えば、娘3人は自宅から近い公立認可保育所でお世話になりました。最初から双子は兄弟加算、さらに5歳差の三女も兄弟加算で乗り切ったという幸運ゆえです。ただ、中野区では子ども・子育て会議委員を務め、川崎市で保育事業者等選定委員会委員を務めるなどの機会に恵まれたおかげで、様々な保育所やその運営事業者を精査することができました。

我が子のために良い保育所を選びたいという親心はよくわかります。しかし、良い保育所とは何かを理解している人は少ないかもしれません。

例えば、週末に布団シーツを持ち帰って洗濯し月曜朝にシーツをかける保育所は少なからずあります。お昼寝用のコットを使っている保育所なら、シーツ代わりのタオルかもしれません。これを親負担無しでやってくれる保育所はどうでしょうか?あるいは使用済みのおむつを持ち帰らずに保育所で処理してくれるところも増えてきました。これらは親の利便性を上げているだけであって、子どもの生活や育ちに直接良い効果をもたらしているとは言えません。間接的に親子がふれあう時間を増やせる効果は否めないにしても。

文字の練習、足し算引き算、リトミック、英会話、絵画教室、ピアノレッスンをやってくれる保育所はどうでしょうか?習い事にも通わせたいけれども、退勤してから連れて行くのは大変だ、しかも追加費用無しで保育料の範囲でやってくれる、となると良い保育所に見えてしまいます、親には。それはあくまでも習い事の範疇であって、幼児教育・保育の質とは無関係だと理解する必要があります。習い事を否定はしませんが、それを看板にするのは安易な客寄せに過ぎません。

幼児教育・保育で重視されているのは、非認知能力の開発です。園庭や散歩先の公園で泥だらけになるほど遊び、五感を通じて土・水・空気・植物・動物とふれあう機会や経験を増やすことが、その子の成長していくときの器を大きくしてくれます。子どもたちの集団の中で、人間関係をときにケンカしながらも学んでいく、役割分担していく、そのような経験が、就学して以降の成長につながります。器が大きくなっていないのに詰め込んだら、器自体が壊れてしまいます。

とはいえ、自宅周辺や通勤途中などの地理的条件が整わなければ、どれだけ良い保育所であっても選ぶことは難しいでしょう。いくつか絞りこんだ上で、必ず見学していください。保育記録を見せてもらうと、園児たちの一日の生活が分かります。また、そこに残されている記録内容を見ると残酷なまでに保育士さんたちの資質も見えてきます。できれば、夕方のお迎え時の保護者から園の様子を聞いてみるのも良いでしょう。朝はさすがにみんなが忙しいのですが、夕方は少しは余裕があるかもしれません。

もし保育所選びに間違ったとしても、3歳4月のタイミングがチャンスです。小規模保育所から3歳4月に移らなければならない人もいるのですが、保育所新設が続いている地域では3~5歳の定員枠に空きが残っていることが多く、新しい保育所ができるお知らせを地方自治体のホームページなどで探してみてください。年度途中に開所する保育所も狙い目です。