保育所の選び方(3)

利用者としてはアクセスできない情報かもしれませんが、保育所の運営事業者を選定する立場になると、一人では処理しきれないくらいの情報を提供してもらい、複数の専門分野の異なる有識者や公認会計士が審査にあたります。「保育所の選び方(2)」で財務状況及び経営体制を観点として挙げました。その他の観点についても追記しておきましょう。

保育士の確保

認可保育所の設置基準として、職員配置は欠かすことができません。年齢別の保育士の配置に加えて、産休育休代替保育士、さらには地方自治体が上乗せした基準でのフリー保育士確保などが求められます。4月開所予定で入園申込みを受け付けておいて、保育士が足りないので開所できませんでしたなんてことは許されません。

2018年4月には、他園から保育士を一斉に引き抜いて保育所が新設され、保育士が足りなくなった既存園が運営を縮小せざるを得ない事態に陥った事件がありまいsた。

横浜の保育士“一斉移籍”、保護者の涙と怒りとその顛末
「鶴見中央はなかご保育園」は前代未聞の形で誕生している。
「職員のかたがただけでなく、私たち親子も、この保育園にかかわる人みんなが裏切られた、その一言です」
 涙ながらに語るのは、横浜市鶴見区にある認可保育園「寺谷にこにこ保育園」に子供を通わせていた保護者だ。
 3月末、同園は、園長と主任を含む保育士11人が一気に退職した。その結果、4月からは認可保育園にもかかわらず、運営を縮小せざるを得ない状況に陥っている。新3~5才児クラスが廃止され、37人の園児たちは市内の別の保育園への転園を余儀なくされた。多くの被害者が生まれる中、思わぬ事実が発覚した。
「寺谷にこにこ保育園」を退職した11人のうち、園長と主任を含む7人は、前述した4月に新設されたばかりの「鶴見中央はなかご保育園」で働いているというのだ。

https://blogos.com/article/296940/

引き抜いた新設園の運営事業者、移籍した保育士たちにモラルが無いと言ってしまえばそれまでなのですが、現場で声の大きな人に引きずられたり、既存園の待遇条件が良くなかったりしたのかもしれません。保育士不足の安易な確保策がこれでは困ります。確保済みの保育士氏名、確保方策などの確認は必要です。

川崎市には、一般財団法人川崎市保育会があります。加盟する保育所とその運事業者によって一括採用や研修が行われています。加盟事業者は統一の定期昇給有りの給与表を使うことが義務づけられているので、保育会を通して採用された保育士は待遇が保障されることになります。処遇改善によって保育士を確保することが正道と考えます。

もう一つの悩みは、問題を起こした保育士を排除する仕組みが弱いことです。刑事事件で禁錮以上の刑を受けた保育士は登録を取り消すことになっていますが、本人の申し出によることになっているので実効性が薄く、幼児への犯行を繰り返すケースが報道されています。

「厚労省 保育士の犯歴照会、義務に 登録取り消しを徹底」毎日新聞2018年1月1日
https://mainichi.jp/articles/20180101/k00/00m/040/086000c

刑事事件になっていれば保育士登録取り消しにもできますが、事実認定にも至らず退職した保育士がいた場合、野放しになって再就職できてしまいます。わいせつ事件、虐待事件など、二度と保育現場に戻ってきて欲しくない保育士を排除する仕組み作りが求められます。