安倍総理は2013年4月19日、成長戦略の柱として女性就業率向上(育休3年含む)と待機児童ゼロを打ち出した。マスメディアでは「育休3年」と「待機児童ゼロ」がリンクされて報道されていないようだ。3歳未満の子どもで保育所に預けられているのは約3割で、定員の少な目な1歳児あたりが最も待機が多くなる傾向にある。1歳児の親に在宅育児してもらうと待機児童ゼロも達成するしかけになる。
日本女性の就業率(労働力人口に占める就業者割合)は、M字カーブと呼ばれているように30代で落ち込み、40代で戻る傾向にある。かつてドイツやイタリアでも見られたが、現在では日本や韓国くらいしか残っていない傾向である。女性の就業率を向上させると経済成長率4%の押し上げ効果があるとOECDからたきつけられたこともあり、安倍総理は女性の離職率低下を図る意味で「育休3年」を打ち出したようだ。
もし、「育休3年」を実現したいなら次の3つに配慮することが条件になる。
- 育休中の所得保障
- 育休取得者への人事評価
- 復職支援プログラムの拡充
まず、現行の育児休業給付は雇用保険加入者に対して、従前給与の50%が支給されている。保育所を利用しそうな共働き夫婦がいるとき、経済的事情としては相対的に所得が低い方が育休を取得した方が世帯収入の減少を最小限にとどめることができる。所得保障を8~9割まで引き上げてやることで、男女の性差無く育休取得を促すことができる。現状として、男性の方が高所得であることが多いためである。さらには、パート・アルバイトに対する所得保障も導入しなければ、一部のフルタイム就業の女性のみを優遇する結果になる。
財源は、認可保育所の運営費が浮く分をつぎ込めば十分に手当可能である。ある自治体の認可保育所で0歳児保育にかけている費用を計算すると、一人当たり月額30万円になる。雇用保険と保育所運営費と共有できれば、待機児童全員分の所得保障だってできる。これまで保育所を増やせという声に、育休中の所得保障を増やすので在宅育児してくださいと言える政治家がいなかっただけだ。いや、安倍総理も直接はリンクさせていないが。育児休業給付は従前給与が対象なので、そもそもパート・アルバイトだった人の場合にはその金額も少ない。格差固定という批判もあるだろうが、それで待機児童を減らせるなら一つの解決方法だ。保育所を増やすと言っても、質の確保はなかなか難しい。
育児休業で職場を離れると、雇用主は給料を払わなくてよくなるし、社会保険料負担も免除される。熟練?労働者の抜けた穴を埋めるのは大変なのだろうが、代替要員を確保する人件費は休業者分で代替できる。そこを補充せずに周囲に負担を押しつけるような行為が休業者の肩身を狭くする。雇用主として、育休3年を拒む理由はそれほど大きくない。
子育てクラスタの方々のつぶやきや、ごく身近な実例を見ていると、育児休業から復職してみると人事評価が最低ランクに下げられていた、という話がある。3月に消費者庁で制度改正があり、育休取ったら人事評価を上げる!ええっ?みたいな記事もあったが、せめて従前通りにしておいてほしい。うちの相方もそうなのだが、育休2回も取って在職中、さらには管理職昇格みたいなのが初物の場合、人事がどうやって扱って良いものか、腫れ物にさわるような状態になる。平社員に転勤の度にお伺いなんてちょっと異常だと感じる。せっかく人事が腫れ物扱いしてくれているのだから、後輩等が続く育休後のキャリアパスルート開拓だとどんと構えれば良いのだと思う。
3点目は、長期休業後の復職リハビリを支援しなければ、結局は復職せずに退職になってしまうことである。出産時に就業していた女性が1年後に6割が離職している現状がある。休業者の一定割合が、自分は時代遅れになってしまったのではないかと心配するようだ。3年にもなれば、元の職場に戻ったはずが人事異動で初めましての人ばかりかもしれない。笑い話にもならない。男性女性を問わず、ワークライフバランスを実現しておかないと、女性の育休・復職条件だけ気にしても事態は改善しない。
参考までに、twitterでの反応がまとめられているのでリンクしておく。なかなか批判的な意見が多数を占めるようだ。
「首相が育休を3年に延長することを経済団体トップに要請したことへの反響」
http://togetter.com/li/490476