ケイパビリティの現実

アマルティア・セン教授の講演の後に開催された震災復興シンポジウムで、主婦を名乗る聴衆から質問に名を借りた自己主張がなされた。思い込みと決めつけと、人の話に耳を傾けない態度は、スルーしたパネリストが共通して感じていたことかもしれない。個々人に与えられた潜在的な選択能力、ケイパビリティの欠如こそが貧困なのだとセン教授は言っている。目の前にある選択肢が見えないことこそ貧困の証明であり、はからずも実例を観察することになった。

アマルティア・セン教授、震災復興を語る

2012年2月6日、六本木にある政策研究大学院大学を会場に、アマルティア・セン教授の講演会が行われた。震災復興について語った講演の中では、津波で家を失い失業した人々、原発事故で避難している人々、そして家族・地域・世代のつながりを断ち切られてしまった多くの人々はケイパビリティを失った状態なのだと指摘する。

保育料を引き上げる理由(4)

保育料を引き上げる理由(1)~(3)までで、各種保育所が生まれていること、そして待機児童だけが問題なわけではなくて、認可保育所に入れるかどうかが新たな格差を生んでいることが理解してもらえただろう。川崎市で、なぜ今になって保育料を引き上げなければならないのか、記者発表要旨からかいつまんで説明したい。

岩波書店コネ採用明記を擁護してみる

岩波書店の採用情報で応募資格に社員または著者の紹介が必要との注記があり、コネ採用を明記しているレアケースとして話題になっている。うがった見方をするならば、これだけソーシャルネットワークが発達した世の中で社員や著者にたどり着けない学生がいるわけはなく、このような応募資格を提示することでネットワーク活用力を見ているのだ、とも考えられる。

東野圭吾『マスカレード・ホテル』

★★★★☆作家生活25周年特別刊行3部作の完結編になっているらしい。東野圭吾『マスカレード・ホテル』読了。先に読んだ『麒麟の翼』よりも伏線の回収の仕方は素直ですっきり、職業柄の「常識」にとらわれる登場人物の描き方も好ましい。

東野圭吾『麒麟の翼』

★★★☆☆
映画公開が始まった作品。東野作品の醍醐味は、数々の伏線が最終章に向けて結びついて解決されていく爽快感にあると個人的には思っている。タイトルである「麒麟の翼」に関わる人間模様を描写することが作品の目的にも感じる。

保育料を引き上げる理由(3)

首都圏での待機児童数は毎年減っていないように見える。でも、認可保育所の定員数は増加しているし、自治体補助金付きの認可外保育所も増えている。いわば「動的均衡」と呼べるような状況で、新規開設した保育所に入所が決定された子ども数を上回る新しい入所申請者が現れるから待機児童数が減らない。スウェーデンに学べば、簡単に解決できるかもしれない。

保育料を引き上げる理由(2)

保育所にもいろいろあって、利用者負担もいろいろある。認可保育所では、お財布の中身をのぞき込んでから利用者負担が決まる仕組みをとっている。同じように子どもを預けていたとしても、低所得のシングルマザーだと無料、フルタイム共働きで十分な世帯収入があると6万円といった具合だ。

保育料を引き上げる理由(1)

2011年9月から半年にわたって「川崎市保育サービス利用のあり方検討委員会」に財政と社会保障の学識経験者として参加してきた。数回にわたって、川崎市の保育料がどのように引き上げられるのか?なぜ保育料を引き上げなければならないのか?、そして川崎市での議論の経過と待機児童に悩む他の都市への影響について書き連ねてみようと思う。

年度末の「研究成果」にご注意!

「東京大学地震研究所が東京直下型地震が起きる可能性が4年以内70%と発表」なんて見出しが新聞各紙、あるいはニュースサイトを賑わした。でもちょっと待って欲しい。この時期に発表される「研究成果」には隠されたメッセージがある。