孫崎享『不愉快な現実』

筆者は外務省官僚として各国で外交官を務め、最後には防衛大学教授でキャリアを終えるという、理論派の元外交官です。帯には尖閣諸島をなめるようにして飛行する航空自衛隊機が映っていて、平積みにされている書店では手に取ってしまう仕掛けがあります。要点から言えば、日米の相互理解がずれてきてしまっていて、日本人よ周囲を見渡して現実認識を改めよというメッセージがちりばめられています。

福岡伸一『動的平衡1・2』

分子生物学者・福岡伸一の雑誌「ソトコト」での連載をまとめたものである。代表作『生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)』は、細胞膜すら持たないウイルスは生物なのか無生物なのか?という問いかけから、読者を分子生物学の世界へ引き込む手腕は秀逸だった。本書2冊もそこから逸脱することなく、様々なエピソードを交えながら読者が腑に落ちる説明をしている。

東京電力の値上げと消費税増税の共通点

接点の無さそうな二つの問題の共通点は、上げれば増収になると単純に考えていることだ。電気料金10%値上げして10%増収するなんて価格弾力性はあり得ない。真っ当な家計あるいは事業者であれば節電によって電気料金の伸びを抑えるはずだ。消費税増税にしても税率を上げれば税収増になると信じているわけだ。経済が縮小してしまえば目論見は崩れることになる。

インドネシアと日本

2年続けて訪れたインドネシアの地で、日本との関係について考えてみた。人口は約2億4千万人で世界第4位、年齢構成が若く、伸び盛りの国である。日本語学習熱が高まっており、EPAに基づくインドネシア人の看護師見習い・介護士も来日している。親日である理由は、植民地支配から脱して独立するのに日本が大きく関与したためらしい。今後、国の発展に有為な人材が、日本に留学して育ってくれれば良いと考える。

所得税確定申告にまつわる話

確定申告期間に入ってきたので、勤労学生控除、eTax、そして毎年変わる「確定申告書等作成コーナー」の話など。それにしても子ども3人の扶養控除が無くなったのはとても痛い。

国家公務員給与削減の違和感

民主党公約「国家公務員の人件費削減」と今回の「国家公務員給与削減」は同じものに見えるかもしれないが、別物だ。皆が給与を減らして人件費を減らすなんて方法は霞が関や永田町の常識でしか無いやり方である。皆で一律給与削減ではなく、高給取り数人に辞めてもらうだけで人件費削減目標は達成できるわけだ。もっと言えば、公務員制度改革を本気でやり通すのであれば、国の仕事と地方の仕事をきっちりわける地方分権改革を進めることと、国民に対して「おかみ頼み」を止めてくれ、国の仕事に優先順位をつけさせてくれ、と言わなくてはならない。

マイナンバーと子ども手当未申請

マイナンバーが導入されていれば、機械的に子ども手当受給資格を持つ人をピックアップした上で給付通知を送りつけることが可能になる。オプトイン型の給付通知で、いらないという人は連絡すれば止めてもらえる。子ども手当を出したくないけど仕方なくやるんであれば、オプトアウト型の給付通知も可能だ。今回の子ども手当を申請した人のみに給付するのはまさにそんなやり方だった。マイナンバーが導入されていれば、子ども手当未申請なんて起こらなかったのだ。

東野圭吾『真夏の方程式』

★★★★★
作家生活25周年特別刊行3部作の第2作目、読んだのは最期だが。東野圭吾『真夏の方程式』読了。探偵ガリレオシリーズ長編としては3作目である。事件の現場となる「玻璃ヶ浦」は、読み進めているうちに伊豆半島かな、それとも駿河湾のどこかなのかな、と想像を膨らませていた。

在宅医療推進-野田総理・柏市訪問をつなぐ線

2012年度の診療報酬改定で在宅医療推進が決まったことと、2月11日に野田総理が千葉県柏市を訪問したことは、2つの点として報道されているが、これらは線でつながっている。線をつなげているのは、元厚生労働事務次官、辻哲夫東大教授だ。医療に関しても病院中心主義を止めるという彼の考え方については私も支持する。ただ、ものごとの進め方に関してはその手腕に感服するばかりだ。